2章(後編)

模試終わりの昼過ぎの空は、綺麗な青空のままだった。

カフェで彼女と僕は新作の飲み物を頼んだ。カフェには店内とテラス席があったが、二人とも一致でテラス席を選んだ。

春の気持ちいくらいの暖かさ、そよ風の吹く中カフェのテラスで新作の飲み物を飲む。その気持ち良さは格別だった。

たけるくんって呼んでもいい?」

テラス席でこの気持ちいい環境に浸っていた僕は、ぼーっとしていた。

「ねぇ!」

「はい!」びっくりした。

「聞いてるー?」

「ごめん、なんって言ったの?」

彼女は、ムスッとした。

「君のこと、たけるくんって呼んでいいかを聞いたのー。」

「あぁ、うん!大丈夫だよ!僕は、木村さんでいいかな?」

彼女の表情は柔らかくなった。

「ありがと!みつきでもいいよ?」

「みつき…うん、わかった」

僕は、あまり人を下の名前で呼ぶことは無いので、少し照れくさかった。

「ねぇ、たけるくんは好きな人とかいないの?」

僕は、つい真顔になってしまった。

「いないと思うけど、どうしたの?いきなり」

「いや、どうなのかなぁーって」

「木村さんは、いるの?」

「みつきだってばー!」

「あ、ごめんみつき」

2人で笑いあった。

「私はねぇ、よくわかないんだ。好きなのか好きじゃないのか」

意外と真剣な顔で言うので、僕はどう反応していいか分からなかった。

「そっか、けど分かる好きかどうか分からない微妙な気持ち。」

「え、分かってくれる?」

彼女は意外そうな顔だ。

「うん、分かるよ。僕も昔、同じ気持ちになったことあるからさ」

「意外だね」

彼女は、笑いながら言った。

「意外かな?けど、好きかどうかを考えてる時点でもう、好きになってるのかもね」これは、僕の経験談と言うよりは本心だ。

昔の幼なじみの子。たぶん、あの子の事が好きだったんだ。

たけるくん、いいこと言うね。また今度話聞いてよ」

「もちろん」

「今日は、色々とありがとね!いきなり話しかけちゃったのに。これから、仲良くしてよ」

「もちろん、こちらからもお願いします」

僕は、微笑んだ。

「ありがと!じゃぁ、そろそろ帰りますかー!」

いつの間にか、辺りは暗くなり始めていた。

「そうだね」

「いやー、話したねー色々。じゃぁ!帰り道逆だから、また明日ねー!」

木村さんと別れてから1人で家に帰る。

帰り道は、あの日のように綺麗な夕日が目の前に広がっていた。

「今日も、綺麗だ」

「そうだねー」

後ろから声が聞こえた。

「えっ?」

そこには、高木さんがいた。

「帰ってんじゃなかったの?」

「帰ったんだけどさー、私のお気に入りの場所があるからそこに行こっかなぁーって歩いてたら、たけるくんがいたから声掛けちゃった」

彼女の顔が夕焼けが眩しくて見れない。

「連れて行って上げようか?」

「えっ?」

「私のお気に入りの場所だよー!」

「じゃぁ、お願いします」

彼女は、笑いながら

「お任せ下さい!」と言った。

そこから、坂を上がり開け道に出た。

「ここ気がする」

そうだ、前に猫について来た時の公園だ。

「えー、知ってるのー」

彼女は、ムスッとした。

「知ってると言うか1回だけ来た」

「私、よくここに来るんだ。なんだか落ち着くんだよね、綺麗だし」

「確かに綺麗だね」

「ねぇ!2人の秘密の場所にしようよ!人もあんまり来ないし」

彼女は、綺麗な夕日に照らされいつもよりキラキラした笑顔だった。

「いいね、僕も賛成。けどなんだか照れくさいね」

「あ、来週から体育祭の練習だね!がんばろ!」

忘れていた。体育祭は6月の下旬だった。運動に自信はあまりないが運動は好きなので体育祭は少し楽しみだった。

「最後の体育祭だしね。がんばろ」

「いいね」笑顔で答えた。

だんだんと夕日が沈み二人の影を伸ばし、公園が次第に暗くなり始める。

「暗くなってきたし、そろそろ帰ろうか」

「そうだね、じゃぁまた明日ね」

「また明日か…いいね。また明日ね」

気のせいかな、また彼女が泣いていた気がする。

けど僕は何も聞けず彼女を見送った。背中が見えなくなるまで。

そうして僕も背中を赤く染めながら家の方へ足を向けた。